在留資格「企業内転勤」完全ガイド:申請から許可までの実務知識

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はじめに

グローバル化が進む現代のビジネス環境において、海外の事業所から日本の事業所への従業員の異動は、ますます一般的になってきています。この記事では、在留資格「企業内転勤」について、申請要件から実務上の注意点まで、詳しく解説していきます。

企業内転勤の基本的理解

企業内転勤の在留資格は、日本に本店、支店その他の事業所を持つ企業が、外国にある事業所からの転勤という形で外国人を受け入れる場合に認められる在留資格です。この資格で認められる活動は、主に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務であり、外国の事業所からの転勤に基づいて日本の事業所において行われる活動に限定されます。

外国人材の受け入れにおいて、この在留資格が特に重要視される理由は、グローバルな事業展開を行う企業にとって、国際的な人材の移動が不可欠だからです。海外で培った専門知識や技術を日本の事業所で活用することで、企業の国際競争力を高めることができます。

申請のための基本要件

企業間の関係性について

企業内転勤の申請においては、日本の受入れ企業と外国の送出し企業との関係性が重要です。両者は親会社・子会社の関係にあるか、関連会社として出資比率が20%以上である必要があります。また、同一の企業グループに属している場合も認められます。

さらに重要なのは、両事業所が実体のある事業を行っているという点です。単なるペーパーカンパニーではなく、実際の事業活動が行われていることを示す必要があります。この実態は、事業所の規模、従業員数、売上高などの具体的な指標によって判断されます。

転勤者本人の資格要件

転勤者本人に関する要件は、主に職歴、学歴、実務経験、そして報酬の面から判断されます。まず、転勤前の外国事業所での勤務期間については、最低1年以上の継続勤務が求められます。また、転勤前に従事していた業務と、日本で予定されている業務には関連性が必要です。

学歴や実務経験については、大学、短大、または高等専門学校での専攻が転勤後の業務に関連していることが求められます。ただし、10年以上の実務経験(うち転勤前の業務に関する経験が1年以上)がある場合は、この学歴要件に代わる要件として認められます。

報酬面では、日本人が同様の業務に従事する場合に受ける報酬と同等以上であることが求められます。これは、外国人労働者の権利を保護し、不当な待遇差別を防ぐための重要な要件です。

申請手続きの詳細

申請手続きは大きく分けて、書類準備、申請、審査、許可の段階があります。まず、申請に必要な書類は申請人本人に関する書類、受入れ企業に関する書類、外国の事業所に関する書類の3種類に分類されます。

申請人本人に関する書類としては、在留資格認定証明書交付申請書や写真、パスポートのコピーなどの基本的な身分証明書類に加え、職歴証明書や学歴証明書、具体的な職務内容を説明する資料が必要です。これらの書類によって、申請人が企業内転勤の要件を満たしていることを証明します。

受入れ企業側では、会社の基本情報を示す資料として、会社案内や登記事項証明書、決算報告書などが求められます。これらの書類は、受入れ企業が適切な事業活動を行っており、外国人材を受け入れる体制が整っていることを示すために重要です。

外国の事業所についても同様に、会社案内や登記事項証明書に相当する文書、事業実態を示す資料が必要です。これらの書類によって、送出し企業の実態と、両社の関係性を証明します。

在留期間と更新について

在留資格「企業内転勤」の在留期間は最長で5年となっています。初回の許可では通常1年または3年が付与されることが一般的です。この期間は、企業の事業計画や転勤者の役割に応じて決定されます。

在留期間の更新に際しては、企業内転勤の実態が継続していることが重要な審査ポイントとなります。具体的には、当初の申請時に示された業務内容や待遇が適切に維持されているか、雇用契約が確実に履行されているかなどが確認されます。更新申請は、在留期間満了日の3ヶ月前から行うことができます。

実務上の重要な注意点

企業内転勤者の日本での活動において、いくつかの重要な注意点があります。まず、業務内容の変更については、申請時の業務内容から大きく逸脱しない範囲での変更は認められますが、大幅な変更の場合は在留資格変更許可申請が必要となります。

勤務地や就労場所の変更については、同一企業内での転勤であれば原則として問題ありませんが、就労場所の変更届出は必要です。この届出を怠ると、在留資格に関する問題が生じる可能性があります。

副業や兼業については、原則として認められていません。ただし、特別な事情がある場合は、資格外活動許可を取得することで可能となる場合があります。この許可の取得には、副業・兼業の必要性や本業への影響などを詳しく説明する必要があります。

また、家族の帯同については、配偶者及び子については「家族滞在」の在留資格で可能です。ただし、家族が就労を希望する場合は、別途資格外活動許可の取得が必要となります。

実務における一般的な疑問への対応

実務の現場では、さまざまな疑問が生じることがあります。例えば、転勤元の会社での勤務期間が1年未満の場合は、原則として要件を満たさないため申請できません。ただし、企業の特殊な事情がある場合は、個別に相談することをお勧めします。

報酬の支払方法についても、よく質問が寄せられます。報酬を外国の事業所が支払うことは可能ですが、その場合でも日本の最低賃金法等の労働関係法令は遵守する必要があります。また、転勤後の職務内容が転勤前と異なる場合については、完全に異なる職務への転換は認められませんが、同種の業務の範囲内での変更は可能です。

おわりに

企業内転勤の在留資格は、グローバルビジネスを支える重要な制度として機能しています。申請にあたっては、企業間の関係性の確認、転勤者本人の資格要件の確認、必要書類の適切な準備、そして手続きの期間を考慮したスケジュール管理が重要です。

また、在留期間中は就労条件や活動内容に変更がある場合の適切な対応も必要となります。スムーズな手続きのために、事前の十分な準備と計画が推奨されます。

当事務所では、企業内転勤の在留資格に関する相談を随時承っております。経験豊富な行政書士が、お客様の状況に応じた最適なアドバイスを提供いたしますので、お気軽にご相談ください。

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