在留資格「高度専門職」(高度人材ポイント制)の概要と優遇措置
在留資格「高度専門職」(高度人材ビザ)は、日本企業が海外の優秀な人材を採用しやすくなるよう、ポイント制で一定の要件を満たした外国人に付与される在留資格です。
ポイント制による評価
「高度専門職」の在留資格を取得するには、申請者がポイント制で70点以上を獲得する必要があります。70点以上で高度専門職1号、80点以上で高度専門職2号の対象となります。ポイントは、「学歴」「職歴」「年収」「研究実績」等の項目ごとに設定されており、申請者の希望する活動内容に応じて、3つの類型(高度学術研究活動、高度専門・技術活動、高度経営・管理活動)のいずれかで評価されます。
企業は、採用を検討している外国人のポイント計算を行い、必要な書類を準備する必要があります。ポイント計算の詳細やボーナスポイントに関する資料は、出入国在留管理庁のウェブサイトで確認できます。
→出入国在留管理庁ウェブサイト
在留資格「高度専門職」(高度人材ポイント制)の申請手続きの流れ
在留資格認定証明書交付申請の流れ
これから日本に入国される外国人の方が、高度人材として日本で活動するためには、まず「在留資格認定証明書」を取得する必要があります。「在留資格認定証明書」交付申請は、採用企業が外国人本人にかわって、地方出入国在留管理局に申請を行います。この際、ポイント計算表とポイントを証明する資料を提出します。
- ステップ1地方出入国在留管理局の窓口での申請
- 入国予定の外国人の方の受入れ機関の方等が、地方出入国在留管理局の窓口で「高度専門職1号」(イ・ロ・ハのいずれか)に係る在留資格認定証明書交付申請を行います。
- 申請時には、行おうとする活動に係る「ポイント計算表」と、ポイントを立証する資料を提出し、高度外国人材の認定を申し出ます。
- ステップ2出入国在留管理庁における審査
- 出入国在留管理庁において、当該申請に係る入管法第7条第1項第2号に掲げる「上陸条件への適合性」の審査が行われます。
- この審査の中で、ポイント計算が行われます。
- ステップ3在留資格認定証明書交付
- 審査の結果、在留資格該当・上陸条件適合と認められれば、在留資格認定証明書が交付されます。
- 今回の申請により上陸条件の適合性の審査は終了しているため、在外公館における査証申請の際に在留資格認定証明書を提示することで、スムーズな査証発給、上陸審査手続きが行われます。
- 就労を目的とするその他の在留資格の上陸条件に適合している場合、申請人が希望すれば当該在留資格に係る在留資格認定証明書が交付されます。
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請の流れ
すでに日本に在留している外国人の方が、高度人材として日本で活動するためには、「在留資格変更許可申請」または「在留期間更新許可申請」を行う必要があります。
- 在留資格変更許可申請: 現在の在留資格から「高度専門職」に変更する場合
- 在留期間更新許可申請: 現在の「高度専門職」の在留期間を更新する場合
- ステップ1地方出入国在留管理局の窓口での申請
- 在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請のどちらの場合においても、地方出入国在留管理局の窓口で行います。
- 申請時には、行おうとする活動に係る「ポイント計算表」と、ポイントを立証する資料等を提出します。
- ステップ2出入国在留管理庁における審査
- 出入国在留管理庁において、高度外国人材該当性等の審査が行われます。
- 審査では、以下の点がポイントとなります。
○行おうとする活動が高度外国人材としての活動であること
○ポイント計算の結果が70点以上であること
○在留状況が良好であること
- ステップ3許可・不許可
- 審査の結果、必要な要件を満たす場合は、在留資格変更許可または在留期間更新許可が与えられます。
- 必要な要件を満たさない場合は、不許可となります。
○在留資格変更許可申請の場合、現在の在留資格による在留期間があれば、当該在留資格による在留を継続できます。
注意点
上記は一般的な流れであり、個別のケースによって手続きや必要な書類が異なる場合があります。
詳細な手続きや必要書類については、お気軽にお問い合わせください。
出入国管理上の優遇措置
高度人材として認められると、様々な優遇措置を受けることができます。主な優遇措置は以下のとおりです。
高度専門職1号
- 複合的な在留活動の許容: 通常は許可された在留資格に基づいた活動しかできませんが、高度人材は複数の在留資格にまたがる活動を行うことができます。例えば、大学で研究を行いながら、関連する事業を経営することも可能です。
- 在留期間「5年」の付与: 通常の就労ビザよりも長い在留期間が付与されます。この在留期間は更新することも可能です。
- 永住許可要件の緩和: 永住許可に必要な在留期間(原則10年以上)が短縮されます。3 高度人材としての活動が3年以上、または80点以上の高度人材であれば1年以上で永住許可の申請対象となります。
- 配偶者の就労: 高度人材の配偶者は、学歴や職歴の要件を満たさなくても、「教育」「技術・人文知識・国際業務」などの活動を行うことができます。
- 親の帯同: 一定の条件を満たせば、高度人材の親を日本に帯同させることができます。主な条件として、高度人材の世帯年収が800万円以上であること、高度人材と同居すること、高度人材またはその配偶者のどちらかの親であることが挙げられます。
- 家事使用人の帯同: 一定の条件を満たせば、高度人材は外国人の家事使用人を雇用し、日本に帯同させることができます。条件としては、世帯年収や家事使用人への報酬額などが定められています。
- 入国・在留手続の優先処理: 高度人材は入国審査や在留資格の審査において、優先的に処理されます。
高度専門職2号
「高度専門職1号」の資格で3年以上活動し、一定の条件を満たせば、「高度専門職2号」に変更することができます。「高度専門職2号」になると、以下の追加の優遇措置を受けることができます。
- 活動範囲の拡大: 「高度専門職1号」で認められる活動に加え、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことができます。
- 在留期間の無期限化: 在留期間が無期限になります。
企業が「高度人材ビザ」を選ぶメリットと他ビザとの違い
「高度人材ビザ」は、正式には「高度専門職」という在留資格で、高度な知識やスキルを持つ外国人材を日本に受け入れるための制度です。企業が「高度人材ビザ」を選ぶメリットは、大きく分けて以下の3点です。
1. 優秀な人材の確保
- 世界中から優秀な人材を採用: グローバル化が進む中、優秀な人材を世界中から確保することは、企業の競争力を高める上で重要です。「高度人材ビザ」を取得できる外国人は、高度な知識やスキルを持つ人材と定義されているため、企業は質の高い人材を獲得しやすくなります。
- 多様性によるイノベーション創出: 外国人材は、日本人とは異なる視点や発想を持っていることが多く、企業に新たなイノベーションをもたらす可能性があります。
- 海外ビジネス・インバウンドビジネスの推進: 海外進出や海外取引、インバウンドビジネスを展開する企業にとって、相手国の言語や文化を理解している外国人材は貴重な存在です。
2. 採用後のメリット
- 在留期間の長さ: 「高度人材ビザ」は、最長5年の在留期間が付与され、更新も可能です1。他の就労ビザと比べて、長期的な雇用関係を築きやすい点がメリットです。
- 就労制限の緩和: 「高度専門職1号」を取得した外国人材は、複数の在留資格にまたがる活動を行うことができます。例えば、大学での研究活動と関連事業の経営を同時に行うことも可能です。これは、他の就労ビザでは認められていない大きなメリットです。
- 永住権取得の優遇: 「高度専門職1号」を取得し、一定の条件を満たせば、永住権の取得が容易になります。これは、優秀な外国人材を長期的に確保したい企業にとって大きなメリットです。
3. 採用手続きの効率化
- 入国・在留手続きの優先処理: 「高度人材ビザ」の申請は、他のビザと比べて優先的に処理されます。企業は、外国人材をスムーズに採用することができます。
他のビザ(在留資格)との違い
「高度人材ビザ」は、高度な専門知識やスキルを持つ外国人材を対象としたビザであり、他の就労ビザとは以下の点で異なります。
- 対象: 「高度専門職」は高度な知識やスキルを持つ人材を対象としているのに対し、「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などは、特定の分野や業務内容に従事する外国人材を対象としています。
- 要件: 「高度専門職」の取得には、高度人材ポイント制で一定以上のポイントを獲得する必要があります。ポイント制の評価基準は、学歴、職歴、年収、研究実績など、他の就労ビザよりも厳格です。
- 優遇措置: 「高度専門職」を取得した外国人材は、在留期間、就労制限、永住権取得などにおいて、他の就労ビザよりも優遇された待遇を受けることができます。
高度専門職に関するよくある質問
ポイント制に関する質問
Q: 「高度専門職1号」を取得するためのポイント制で、具体的にどのような項目が評価され、それぞれ何点獲得できるのですか?
A: ポイント制では、申請者の希望する活動内容(高度学術研究活動、高度専門・技術活動、高度経営・管理活動)に応じて、それぞれ異なる評価項目と配点が設定されています。評価項目には、学歴、職歴、年収、研究実績などがあり、それぞれの項目で細かい基準が設けられています。具体的な評価項目や配点は、出入国在留管理庁のウェブサイトからダウンロードできるポイント計算表で確認できます。
申請手続きに関する質問
Q: 「高度専門職」の申請に必要な書類は?
A: 申請に必要な書類は、「在留資格認定証明書交付申請書」をはじめ、パスポート、在留カード、卒業証明書、労働契約書など、多岐にわたります。また、企業の規模や上場状況によって、提出書類が異なります。必要書類のカテゴリーは4つに分類され、カテゴリー1と2は提出書類が簡素化されています。カテゴリー3と4は、決算書や事業計画書など、より多くの書類を準備する必要があります。
Q: 申請書類の準備が大変そうですが、何かサポートはありますか?
A: 申請書類の作成や手続きは、行政書士などの専門家に依頼することができます。専門家は、企業の採用戦略に沿ったサポートを提供し、申請書類の作成から各種手続きまでを代行してくれます。また、書類の準備から申請までをワンストップでサポートしてくれるため、採用計画に沿った効率的な手続きが可能となります。
Q: 申請から許可が下りるまで、どれくらい時間がかかりますか?
A: 申請から許可が下りるまでには、通常1〜3ヶ月程度の期間を要します。ただし、繁忙期や提出書類に不備がある場合、さらに期間が延びることもあります。審査が長期化するケースも想定し、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めるようにしましょう。
Q: 卒業見込みの時点で「高度専門職」の在留資格変更許可申請はできますか?
A: 卒業見込み証明書の提出があれば、申請は可能です。ただし、卒業後に卒業証明書を提出する必要があります。毎年3月に大学等を卒業する留学生の在留資格変更許可申請は、12月から申請を受け付けています。
Q: 申請が不許可になることはありますか?
A: 申請内容によっては、在留資格の変更が認められない可能性があります。専攻分野と業務内容の関連性が薄い場合や、書類に不備がある場合は、不許可となる可能性があります。不許可となった場合でも、再申請が可能なケースがあります。再申請では、不許可理由を的確に把握し、修正することが求められます。
在留資格の維持に関する質問
Q: 「高度専門職」の在留資格を取得した後、注意すべきことはありますか?
A: 在留資格を維持するためには、就労活動や居住地の変更などを適切に届け出る必要があります。また、犯罪行為や風俗営業への従事などは、在留資格の取消事由となります。
高度専門職のメリットに関する質問
Q: 高度専門職と他の就労ビザの違いは?
A: 高度専門職は、高度な専門知識やスキルを持つ外国人材を対象としたビザです。「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などは、特定の分野や業務内容に従事する外国人材を対象としている点が異なります。また、高度専門職は、在留期間、就労制限、永住権取得などにおいて、他の就労ビザよりも優遇された待遇を受けることができます。
Q: 「高度専門職」にはどのようなメリットがありますか?
A: 「高度専門職1号」の場合、複合的な在留活動の許容、5年間の在留期間の付与、永住許可要件の緩和、配偶者の就労、一定の条件下での親の帯同、一定の条件下での家事使用人の帯同、入国・在留手続きの優先処理などのメリットがあります。「高度専門職2号」の場合、「高度専門職1号」の活動に加えて、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことができ、在留期間が無期限になるというメリットがあります。また、「高度専門職1号」と同様に、永住許可要件の緩和、配偶者の就労、親の帯同、家事使用人の帯同などの優遇措置を受けることができます。
留意点
- 「高度人材ビザ」の申請には、多数の書類が必要となります。必要書類は、雇用主の企業カテゴリーによって異なります。
- 申請書類には、正確な情報を記入し、必要書類をすべて揃える必要があります。
- 審査官が理解しやすいように、わかりやすく説明することが重要です。
- 申請手続きが複雑な場合は、行政書士などの専門家に相談することをお勧めします。
まとめ
「高度人材ビザ」は、優秀な外国人材を確保し、企業の成長を促進するための有効な手段です。 他の就労ビザと比べて、取得要件は厳格ですが、取得後のメリットは大きく、企業にとって魅力的な制度と言えるでしょう。
コメント